2023年6月レッスンログ

今回のレッスンテーマは「」です。

 ロックダンス、いや、すべてのダンスにおいて「」を使えないのは、足を使わずにサッカーしているのと同じくらい致命的な状態と言っていいでしょう。ダンスの大部分は「」によってできていると言っても過言ではないのです。

 今回はこの「」についての意識すべき点や、練習をしていく中で考えてほしいことについて私の独断と偏見を交えてご紹介。

目次

技を反復して使い方を覚えること

 「腰」で意識するポイントを説明する前に、これだけは言っておきたい。

 アイソレーションだけの練習って必要ですか?

 ダンス始めたてのときを思い出してください。皆さんはとりあえずよくわからないけど近所のダンススタジオに入会して、受付のお姉さんからおすすめされたHIPHOPの入門レッスン的なところに行ったことでしょう(決めつけ)。

 そこでみなさんは首、胸、腰と部位ごとに動かすアイソレーションのトレーニングをさせられたかと思います。まるでインド映画のスターにでもさせられるのかと不安になるあの練習です。実はあの練習は非常に効率が悪いのです。
 よくよく考えていただきたいのですが、実際にダンスしているときにその部位だけをじっくり動かすことってありますか?腰だけ動かしてその他は一切動かさない振付を踊ったことがありますか?腰だけを動かし続けてバトルで優勝したことありますか?

そういうことです。

実際にダンスの振付に合わせられるようになるまでは、動かし方を学ぶって意味でも各部位だけのアイソレは必要じゃないの?」と言ってくる方もいらっしゃると思います。

 逆です。

 そのような練習をするのであれば最初からリズムに乗りながら腰のアイソレを動かせるようにする練習をするべきだど私は考えています。「腰だけを動かす練習」と「アップダウンを入れながらリズムに合わせて腰を動かす練習」は動かし方や意識するポイントが全く違います。アップしながら腰を動かすと膝のポジションが変わったり、腰と連動している上半身の使い方を意識する必要があるので、腰オンリーで動かすよりも考えるべきことはかなりたくさんあって、最初は戸惑うことでしょう。ですが、ダンスの中で自然と腰を入れるという意味では、こちらのほうがより実用的な練習であることは間違いないです。

 「いやでも、リズムにノリながらだけじゃなくて、ロックダンスの技で腰を入れるときに汎用的な使い方を覚えるうえでも必要じゃないの?」という声も聞こえてきます。うるさいなぁ。君たちは。

 じゃあ最初からその技の練習をしてください。例えば「ロックステディ」は腰を使う技の筆頭ですが、「腰がうまく入らないなぁ」と思って、とりあえず腰だけのアイソレを練習したとしても、ロックステディは他にも並行して動く部分がたくさんあります。上半身、膝、腕などと一緒に腰も動かさなければないらないわけですから、練習すべきは、腰の動かし方である以上に腰の合流させ方であると考えています。

 こういった理由から、各部位を練習するよりも最初から技としての塊で練習したほうが、より本番に近い状態で練習できるので効率が良いのです。わざわざ、腰だけを動かすとかいう無意味な練習をいつまでやる気でしょうか。

腰の使い方に特化した技

 ここまで強めに説得してきたからには、腰の使い方を練習するのに最適なロックダンスの技3つをちゃんとご紹介いたします。ちなみにこれらの技は私的ロックダンスの難しい技ランキングのTOP3でもあります。習得するのに一朝一夕ってわけにはいかない難易度なのでじっくりトライしてみてください。

 今回は具体的なやり方というよりも、意識することで体の使い方の練習になるというところにフォーカスしています。

ロックステディ

 上述しておりますが、腰を使う技の筆頭とも言えるのがこいつ。最初に見た時は単なる2ステップだろとか思っていると痛い目を見ます。腰や体、足、手など動かすところが多すぎて、歩きスマホなんて目じゃないくらいのマルチタスク具合に腰を抜かしたことでしょう。
 同時に動かすところは多いのですが、体の構造には逆らっていないので不可能なことをしているわけではありません。腰と体がメインでリズムをとって、その他の部位の動きも腰と体に付随するというイメージです。色々なところに神経を張っていなくてはいけないハイパーマルチタスクな技ではありますが、慣れてくるとロックステディそのものをひとつのシングルタスクとして処理することができるでしょう。このシングルタスク化は時間をかけて慣れてもらうことが手っ取り早いと思います。技の由来は曲の”Rock Steady”に合わせて2ステップしているところからとかそーじゃないとか。

ストップアンドゴー

 想像と現実がとんでもなくかけ離れちゃうのがこいつ。前で教えてくれる先生の動きと同じことが全然できないんですよ。なんでかわからなすぎてイントラに小一時間問い詰めたいランキングは毎年上位をキープ。初めてこの技に触れた人は皆等しく絶望の底に叩き落とされたと言われています。

 ストップアンドゴーは手と体のポジションも当然の如く大事なのですが、腰のリズムどりがスムーズにいかないとアクセントの感じられないのっぺりとした見た目になってしまいます。腰なくしてこの技は成り立たないと言っても良いでしょう。

 しかも先生によっては腰を前で打ち続けたり、エンカウントで左腰を当て続けたり、一回ダウンを挟んだりと、教え方が全然違うのもこの技の魅力(?)。いったい誰を信じればいいんだと疑心暗鬼に陥ることもあるでしょう。私としては色々なパターンを知っておいて、かかっている曲に応じて好きなものを使いわけることをおすすめします。

 別名は”クイッキー”といい、車が行き交う交差点で少年が車をよけて振り向いてよけてを繰り返すところから生まれたとか生まれていないとか。

フットボール

 言うほどフットを使わないのがこいつ。ちなみに“フットボール”の意味をご存知でしょうか?

 サッカーじゃないですよ?

 “アメリカンフットボールのことですね🏉
※サッカー発祥の欧州ではフットボール=サッカーのことなのですが、ロックダンスのできたアメリカではフットボールっていうとサッカーより人気なアメフトを指すことが多いようです。アメリカはサッカー雑魚だからなぁ。

 重心を下げて腰を右に出して中央に戻ってアップして、再び重心を下げて腰を左に出して中央に戻って…ということを繰り返す特徴的な技なのですが、この技の腰についてはアイソレーションという意識以上にアップしている感覚で腰を出すことを意識すると見ている側にリズムが伝わると思います。腰を出す時はエンカウント(裏拍)のタイミングなのですが、このエンカウントの時に重心は下に下がっているけれど、腰の勢いでアップをしているという感覚です。最初はこの感覚が掴めずに重心が下がったところで腰のアイソレをこなすという状態になり、ぎこちない見た目になりがちです。感覚が掴めても見た目の華やかさという点では大きな変化がないのですが、体の内側のリズムの感じ方が違うことが体感できるでしょう

 アメフトのルールにおいて、前方向へのパスは攻撃ターンの一回までしか出せないんですよ。なので縦パスをもらった選手はそのまま走っていくか、味方に横方向に「トス」をしてボールを受け渡すという選択肢を選ぶことになるわけです。この横方向に「トス」する動きから”フットボール”という技ができているとかいないとか(アイシールド21に書いてた)。

ショーもバトルも実践あるのみ

 例えば皆さんがプールサイドで泳ぎ方の本を一生懸命読み込んだところで泳げるようにならないのは想像がつくと思います。泳ぎ方を勉強するのはそこそこに、実際に水に入って手足を動かすことで泳ぐ感覚というものを掴んでいくと思います。

 ここまで、何か動きの練習をするときは練習そのものも大事ですが、実際の技をやりながら覚えることがなによりも大事だということを強く主張してきました。実のところ、塊で技の練習をしているだけでは足りないと思っています。

練習した技を本番で実際に使ってあげてみてください。

 本番で使ってあげることで、体の動きが普段と全然違うことが体感できるでしょう。動画で見返したときに予想以上の自分の下手さに、まるで別人の踊りを見ているような感覚に襲われることでしょう。あなたが感じたこと、見たことは今のあなたの全力です。「練習ではいい感じなのに本番になると緊張するから微妙な動きになってしまう」という理由ももちろんありますが、その理由は占める割合としては大きくありません。シンプルに今の自分が思い描いている理想に自分自身が到達していないだけです。

 舞台でみると「意外と腕が下がってて見た目が悪いな」とか「音楽に対して早く動いちゃってるからハヤドリにならいない練習をしよう」などの見えない改善点がたくさん出てきます。自分の中で完結してしまう練習だけではこれらのことはなかなか気づきづらいものです。アイソレを練習するなら技とセットで練習をするように、ダンスそのものの練習は本番の流れで「やりながらおぼえる」ようにしてみてください。この方法は自分の改善点のみならず「強み」も見つけることができるのでハイパーおすすめです。

 「ダンスバトル出てみたら?」と勧めてくれた人に対して、「もうちょっと上手くなってから出るわ」って言う人いますけど、上述した理由からその「もうちょっと上手くなる」瞬間は一生来ません。断言します。本当に上手くなりたいなら、本番に対する出ない言い訳はやめて”ダメでもともと精神”でトライしてみませんか?バトルやショーには興味がなくて、だだ楽しく踊って飲みたいっていう人は別ですが、少しでも舞台に立ってお客さんによかったと言ってもらいたいという気持ちがあるのなら、まずは実践あるのみ、ショーやバトルに出まくりましょう。感覚掴みまくりましょう。

まとめ

 今月は「腰」をテーマにレッスンいたしました。お越しいただいたみなさんありがとうございました!!「やりながらおぼえる」を忘れずにお互いにゆっくりじっくり極めていきましょ。
 

 ご精読ありがとうございました!

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